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45: 創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 12:51:48 ID:08rYe5hE

「どうかね、その後の調子は」 
N医師はやさしく青年に語りかけた。 
「ええ、だいぶ良くなりました。自分で食事も食べれるようになりました」 
「うむ、やっぱりちゃんと口から栄養を摂らないと早く回復できんからね」 
「でも…」 
「どこかに痛みでも?」 
「いえ痛みはないんですけど、なんとなく…その…」 
「なんとなく?」 
「自分が自分でないような…」 
「ああ、それならしばらくすれば段々と慣れてくるはずだよ。移植患者にはよくあることだよ」 
「よくあること?」 
「移植された患者さんは最初のうち、漠然とした違和感を訴える。体に他人の臓器を 
 入れたことによる精神的なものなんだがね」 
「そんなもんでしょうか」 
「ああ、そんなもんだよ。では、しっかりと体力をつけて早く退院できるようにしなさい」
「ありがとうございます、先生」 


N医師はそんな会話をした後で、青年の両親が待機する部屋へと向かった。 

「先生、いかがでしょうか」 
「ええ、まだ記憶は戻っていないようですが順調に回復されていますよ」 
「ですが、あの子は病室で話をするたびに、何だか自分じゃない…と」 
「私にも同じ事をおっしゃいましたよ。いづれ理解できるようになると思いますが」 
「実は、私達もなかなかなじめなくて…」 

「無理もないでしょうな。あの大事故で奇跡的に無傷なのは彼の脳だけだったのですから」 


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