abstract-1742508_1280


317: 創る名無しに見る名無し:2011/03/01(火) 00:20:23.28 ID:EKJfA/g6

「おじいちゃん、ワープってなに?」 
「一瞬で遠くまで行くことができる夢のような技術さ。でもまだ、できることは証明されていないんだ」 
優秀な科学者である老人は、孫であるエヌ氏の質問に少し寂しそうに答えた。 

エヌ氏が生まれた時代には、移動技術は大いに発展していた。
だれもが安全に、音以上の速さで目的地にたどり着く装置を持っていた。
しかし、究極の移動技術であるワープには到底及ばなかった。
 

成長したエヌ氏は、祖父と同じ科学者になった。
同じ道を歩んだせいか、幼い頃に見た祖父のあの寂しそうな顔が忘れられなくなっていた。
いつしかエヌ氏は、ワープ装置の研究に没頭していた。 

そして、年老いたエヌ氏は、ついにワープ装置の開発に成功したと大々的に発表した。 
発表会には大勢の人間が集まった。
ライバルである科学者はもちろん、新技術を利用したい企業家、
新しい情報を民衆に広めることを使命とするマスコミ、ワープ装置が国政に もたらす影響を懸念する政治家。
中には身分を偽った異国のスパイも混じっていた。 

「お忙しい中お集まり頂き、まことにありがとうございます。こちらが私の開発したワープ装置です」 
エヌ氏のワープ装置は、成人男性より一回り大きいくらいの直方体をしていた。 
「この装置は外から操作することで、中に入った人をワープさせることができます。どう 
でしょう、どなたか体験したい方はいらっしゃいませんか」 
会場がどよめき、エヌ氏に質問が飛ぶ。 

「失礼だが、安全性は問題ないんだろうね」 
「はい、動物実験と助手による実験を成功させております」 
しばしの沈黙の後、ある紳士が体験してみたいと手を挙げた。 

「ありがとうございます。ワープ先には助手が待つ手はずになっています」 
「うむ、ではこのすばらしい体験の感想は、真っ先に君の助手に話すとしようか」 
 紳士が装置の中に入ると、エヌ氏は外部についているボタンのいくつかを押した。 
すると、けたたましい機械音が鳴り響き、それはすぐにおさまった。 

「ワープ終了です」 
エヌ氏が装置を開けると、中に入ったはずの紳士はいなくなっていた。
まるで手品のような光景だった。 

会場全体が感動する中、エヌ氏に向けてこんな質問が投げかけられた。 
「ちなみにさっきの紳士の行き先はどこになっていたのでしょう。かなり遠くですか?」 
「はい。あの方の体は跡形もなく分解されましたので、無事あの世に行けたものと……」 


引用元:https://5ch.net/