田舎

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    その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊すことになった際、初めて中に何があるかを住民達は知りました。

    そこにあったのは私達が見たもの、あの鏡台と髪でした。
    八千代の家は二階がなかったので、玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうです。
    八千代の両親がどうやったのかはわかりませんが、やはり形を成したままの髪でした。

    これが呪いであると悟った住民達は出来るかぎり慎重に運び出し、新しく建てた空き家の中へと移しました。

    この時、誤って引き出しの中身を見てしまったそうですが、何も起こらなかったそうです。
    これに関しては、供養をしていた人達だったからでは?という事になっています。

    空き家は町から少し離れた場所に建てられ、玄関がないのは出入りする家ではないから、窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだという事でした。

    こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、大人達だけが知る秘密となったのです。


    ここまでが、あの鏡台と髪の話です。
    鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、言葉は隠し名として付けられた名前でした。

    ここから最後の話になります。
    空き家が建てられて以降、中に入ろうとする者は一人もいませんでした。
    前述の通り、空き家へ移る際に引き出しの中を見てしまったため、中に何があるかが一部の人達に伝わっていたからです。

    私達の時と同様、事実を知らない者に対して過剰に厳しくする事で、何も起こらないようにしていました。
    ところが、私達の親の間で一度だけ事が起こってしまったそうです。

    前回の投稿で私と一緒に空き家へ行ったAの家族について、少しふれたのを覚えていらっしゃるでしょうか。

    Aの祖母と母がもともと町の出身であり、結婚して他県に住んでいたという話です。
    これは事実ではありませんでした。

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    実は、この悪習はそれほど長く続きませんでした。
    徐々にこの悪習に疑問を抱くようになっていったのです。

    それがだんだんと大きくなり、次第に母娘として本来あるべき姿を模索するようになっていきます。
    家系としてその姿勢が定着していくに伴い、悪習はだんだん廃れていき、やがては禁じられるようになりました。

    ただし、忘れてはならない事であるとして、隠し名と鏡台の習慣は残す事になりました。
    隠し名は母親の証として、鏡台は祝いの贈り物として受け継いでいくようにしたのです。
    少しずつ周囲の住民達とも触れ合うようになり、夫婦となって家庭を築く者も増えていきました。

    そうしてしばらく月日が経ったある年、一人の女性が結婚し妻となりました。
    八千代という女性です。

    悪習が廃れた後の生まれである母の元で、ごく普通に育ってきた女性でした。
    周囲の人達からも可愛がられ平凡な人生を歩んできていましたが、良き相手を見つけ、長年の交際の末の結婚となったのです。
     
    彼女は自分の家系については母から多少聞かされていたので知っていましたが、特に関心を持った事はありませんでした。
    妻となって数年後には娘を出産、貴子と名付けます。

    母から教わった通り隠し名も付け、鏡台も自分と同じものを揃えました。
    そうして幸せな日々が続くと思われていましたが、娘の貴子が10歳を迎える日に異変が起こりました。
    その日、八千代は両親の元へ出かけており、家には貴子と夫だけでした。


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    代々、母から娘へと三つの儀式が受け継がれていたある家系にまつわる話。
    まずはその家系について説明します。

    その家系では娘は母の「所有物」とされ、娘を「材料」として扱うある儀式が行われていました。
    母親は二人または三人の女子を産み、その内の一人を「材料」に選びます。
    (男子が生まれる可能性もあるはずですが、その場合どうしていたのかはわかりません)

    選んだ娘には二つの名前を付け、一方は母親だけが知る本当の名として生涯隠し通されます。
    万が一知られた時の事も考え、本来その字が持つものとは全く違う読み方が当てられるため、字が分かったとしても読み方は絶対に母親しか知り得ません。

    母親と娘の二人きりだったとしても、決して隠し名で呼ぶ事はありませんでした。
    忌み名に似たものかも知れませんが、「母の所有物」であることを強調・証明するためにしていたそうです。

    また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意し、娘の10、13、16歳の誕生日以外には絶対にその鏡台を娘に見せないという決まりもありました。
    これも、来たるべき日のための下準備でした。


    本当の名を誰にも呼ばれることのないまま、「材料」としての価値を上げるため、幼少時から母親の「教育」が始まります。
    (選ばれなかった方の娘はごく普通に育てられていきます)

    例えば…

    ・猫、もしくは犬の顔をバラバラに切り分けさせる

    ・しっぽだけ残した胴体を飼う
    (娘の周囲の者が全員、これを生きているものとして扱い、娘にそれが真実であると刷り込ませていったそうです)

    ・猫の耳と髭を使った呪術を教え、その呪術で鼠を殺す

    ・蜘蛛を細かく解体させ、元の形に組み直させる

    ・糞尿を食事に(自分や他人のもの)など。

    全容はとても書けないのでほんの一部ですが、どれもこれも聞いただけで吐き気をもよおしてしまうようなものばかりでした。

    中でも動物や虫、特に猫に関するものが全体の3分の1ぐらいだったのですが、これは理由があります。


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    私達は唯一の出入口であるガラス戸の前にいたので、外に出たという事はありえません。
    広めといえど居間と台所は一目で見渡せます。
    その場にいるはずのD妹がいないのです。

    「〇〇!?どこ!?返事しなさい!!」

    D子が必死に声を出しますが返事はありません。

    「おい、もしかして上に行ったんじゃ…」

    その一言に全員が廊下を見据えました。

    「やだ!なんで!?何やってんのあの子!?」

    D子が涙目になりながら叫びます。

    「落ち着けよ!とにかく二階に行くぞ!」

    さすがに怖いなどと言ってる場合でもなく、すぐに廊下に出て階段を駆け上がっていきました。


    「おーい、〇〇ちゃん?」

    「〇〇!いい加減にしてよ!出てきなさい!」

    みなD妹へ呼び掛けながら階段を進みますが、返事はありません。

    階段を上り終えると、部屋が二つありました。
    どちらもドアは閉まっています。

    まずすぐ正面のドアを開けました。
    その部屋は外から見たときに窓があった部屋です。
    中にはやはり何もなく、D妹の姿もありません。

    「あっちだな」

    私達はもう一方のドアに近付き、ゆっくりとドアを開けました。

    D妹はいました。
    ただ、私達は言葉も出せずその場で固まりました。

    その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。
    鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった長い後ろ髪。
    異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。


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    5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:投稿日2010/05/20(木) 19:47:25.78 ID:ov/eBcz0P

    私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。
    どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。

    私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
    目立った遊び場などもない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
    町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。

    長らく誰も住んでいなかったようでかなりボロく、古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
    それだけなら単なる古い空き家...で終わりなのですが、目を引く理由がありました。

    一つは両親など町の大人達の過剰な反応。
    その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
    どの家の子供も同じで、私もそうでした。

    もう一つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
    窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が無かったのです。
    以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?
    わざわざ窓やガラス戸から出入りしてたのか?

    そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた「パンドラ」という呼び名も相まって、当時の子供達の一番の話題になっていました。
    (この時点では「禁后」というものについてまだ何も知りません。)

    私を含め大半の子は何があるのか調べてやる!

    と探索を試みようとしていましたが普段その話をしただけでも親達があんなに怒るというのが身に染みていたため、なかなか実践できずにいました。

    場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
    たぶん、みんな一度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。
    しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。

    私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、ある男子がパンドラの話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
    名前はAとします。


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